サッカー
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サッカー
ムルナオでのバカンスも半分が過ぎた頃仲の良いブラジル人の友人からサッカーの試合に誘われた。地元のチームと試合が出来るよう交渉したから出場してくれと言うのだ。
ドイツにはどんな小さな町にでもサッカーチームがあり皆、楽しみながらも真剣に取り組んでいる。サッカーはお遊び程度にしかPlayした事がないので断ったがどうしてもというので仕方なく指定されたグラウンドに行くとすでに地元チームが練習していた。それを見た瞬間これはもう駄目だと思った。180cm以上ある猛牛のような連中が本格的な練習をしているのである。嫌な予感がして自軍を見ると全員「燃えている!」。メンバーはブラジル3人、アルゼンチン1人、イタリア3人、アフリカ勢3人、日本1人という構成である。いざ試合が始まると組織的にきっちりとドイツ軍は攻め、守ってくる。それに比べて連合軍は本当に個性的だ!アフリカ勢は驚異的に運動量が多い。今まで攻めていたかと思うと振り向けばいつの間にか最後列まで戻って守っている。ブラジル、イタリア勢はやはり個人技での突破を図る。僕のポジションは?練習を見たとたんに決めた。あんな猛牛やサッカー命の人間と亘りあえるはずがない。ゴールを決める技術もないしゴールを死守するのも負担が大きすぎる。中盤の人のいない所に常にポジショニングしてボールがきそうになると直ぐに周りを見渡してフリーの人を探して、来れば直ぐにパスを出す。
ドリブルでキープするなんてとんでもない!もたもたしていればあっというまに猛牛達に狙われる。結果、サッカー命の連中はさすがで寄せ集め軍でも踏ん張り接戦に持ち込みながらも一点差で負けた。僕としては最初から勝てるとは思っていなく無事終わってほっとした。翌日、全身筋肉痛で学校へ行くと、その話題で持ちきりである。皆、負けて悔しくて収まりが付かないらしい。もう一つ問題が!イタリアvsブラジル戦争勃発である。お互い負けたのはお互いの勝手プレーにあるというのだ。僕からすればどっちもどっちに思えたが。まあよい、来週再試合をするようだが僕には関係ない、体中痛くてそれどころではない。それに噂を聞きつけたスペイン人やフランス人を我も我もと集まってきて、もう僕の出番はない。ところが両陣営から僕は絶対試合にでなきゃ駄目と言って来た。ブラジル人曰く「イタリア人はチームプレイが出来ない。それに比べて日本人はやっぱり素晴らしい、チームプレイを心がけている!。」イタリア人も同じ事を「ブラジル人は・・」
とんでもない勘弁して欲しい、僕は猛牛の餌食にならないように逃げていただけである。 ところが次第に周りの連中に持上げられて僕もその気になってきた。試合の当日、今度は 同じ語学学校の女性陣も応援に来てくれた。こうなると無欲の第一戦だったが二戦目は少し色気が出てきた。それに一戦目で少しゲーム感も分かってきた。試合早々ボールが回ってきたところで、前に少しスペースがある。ここを詰めてディフェンスが上がって来たところパス。作戦はバッチリ。ドリブルに入ったが少し強く蹴り過ぎた、「あっ!」と思うともう目の前に猛牛が・・。猛牛に体当たりされて吹っ飛んだ僕は足が攣ってしまった。友人のブラジル人達が集まってきてあわや乱闘騒ぎ。ドイツ人も驚いている。「いやいつも通り少し接触しただけで、こんな事になるなんてゴメン・・。」 結局試合開始早々3分でリタイヤ。やはり人間無欲が一番でした。

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