Vollenweider
013/071
Vollenweider
エルマティンガーにステファンがいたように、この店ではリサが本当によく面倒を見てくれた。困ったことがあれば何でも相談に乗ってくれたし、休みの日には車で旦那のロバートと一緒に色んなところに連れて行ってくれた。スイスで飴細工の器具一式を揃えてくれたのもリサであった。ステファンとリサ夫妻とを自宅に招いた和食パーティーは心の底から楽しかった。

エルマティンガーのショーケース-元旦

スイスで労働ビザを所得して、住居も落ち着いた事でようやく日本から妻を呼び寄せた。私が22歳の時に知り合い27歳で結婚した。妻は私の渡欧にも大賛成してくれた。この後、共にウィーンに移りそしてその1年半後、私はパリへと移り、彼女はウィーンに留まった。パリでの生活にもようやく馴染んできた7月、ウィーンから彼女が訪ねてきてくれた。町はサッカーのワールド・カップ・フランス大会一色に染まっていた。大興奮に包まれていくパリの片隅で彼女と逢い、そしてこの後お互い別の道を歩む事となった。この件は私にとって本当に大きな出来事であったが、この連載では趣旨が異なるのでもう二度と触れることはないであろう。
Vollenweiderでヨーロッパの初めてのクリスマスと新年を迎えた。クリスマスが近づいてくると、日本以上に街は独特な雰囲気に包まれていく。店も当然活気づいてくるのだが、イブの夜になっても日本のように深夜にまで仕事が及ぶことはなかった。この店では通常のケーキにWeihnachten(クリスマス)用の飾りつけをしたものがよく売れたが、その他にティーゲベックと呼ばれる、日本風に言うとクッキーの詰め合わせが飛ぶように売れた。その中の一つ「バニラキプフェル」は今Toshi yoroizukaの人気商品の一つとなっている。クリスマス以上にお国柄が色濃く出ているのがNeujahr元旦であろう。スイスはどのケーキ屋も店中「ピンクの豚」「煙突掃除人」「馬蹄」で飾られる。どれもスイスでは幸福を運ぶシンボルとして愛されている。

Vollenweiderのショーケース-元旦

この頃、面白かった事を二つ紹介したい。
まずはテレビ。日本では年末年始にかけて特別番組が目白押しなのに対してスイスでは?楽しみにスイッチを入れればどの局も(といってもスイスは2局しかないが)古い映画をひたすら流しているだけ。なんとテレビ局のスタッフもほとんど休んでいる。ちなみにケーキ屋は元旦から開けている。私が働いていたヨーロッパの店は皆、12月25日か1月1日のどちらか休みを選択できるようになっていて、両日とも店自体は営業していた。無論クリスチャンではない私は大晦日友人達と大騒ぎして元旦に休んでいた。ヨーロッパではノエルは家族と共に過ごし、新年は恋人や友人達と祝う。日本とは正反対である。
もう一つ私が驚いたこと、それはこの時期に限っての事ではない。5時頃の一番電車でウインタートゥーアまで毎日通っていたのだが、列車の中で眠っている人が誰もいないのである。皆、おしゃべりをしたり新聞や雑誌を読んだり…。驚いて友人達に尋ねると口々に当たり前のように答えた。「スイス人はベットの中で眠る。」なるほど言われてみれば当たり前の事だ。私は日本でも一番電車での通勤の経験があるが実情は…。まあここで述べるまでの事はない。皆さん御存知の通りである。

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