Mr.Debertに続いて崖を駆け下りたところには確かに至る所にカカオの実がなっていました。 今まで見てきた最新の農園のカカオの木の高さは精々2.5mくらい。一つの木にはたわわにカカオの実がなっていました。しかしこのエクアドルでは一般的なカカオ農園というジャングルのような農園ではカカオの木は6~7mはあろうかという古木に所々に実がなっている。 おまけにあちこちでカカオの実に苔が生えているようになっており一目で病気に罹っている事がわかります。これでは効率が悪い上に何よりクオリティーの高いショコラを作る事は難しいでしょう。
こういった古くなったカカオの木にToshiYoroizukaFarmで育った最新で最高の木の枝を切り取り接ぎ木して再生しようというのだ。 簡単に言うと 古木の根本に穴を開けそこに新しい品種の枝を切って差し込み括り付け固定します。 そちらの新しい枝が定着して育ってくるとその直ぐ上部で元の木を伐採します。 それによってしっかりと根付い部分だけを残して上部は新しい若い品種になります。 こうして徐々にエクアドルの古くなった農園をリノベーションして行こうという取組なのです。
次に訪れたのがその界隈のカカオが全て集められ発酵、乾燥までが行われる施設へ行きました。 ここで、本でしか読んだ事の無かったカカオの最初の工程の全てを目の当たりにし、学ぶ事が出来ました。
それらは、まず計量されて直ぐに、木で作られた正方形の箱の中に開けられます。一箱で400kg位入る木箱です。一杯になればバナナの葉っぱをかぶせ自然に発酵させます。四日間発酵させるのですが、発酵途中に熱を持ち中心部では約60℃、PHは約5にもなります。 この過程で興味深いものを発見しました。箱の下部からぶくぶくと泡が湧き出しているのです。この現象は現地でも他では滅多に見る事が出来ない貴重な光景だそうです。 カカオの持っている糖分が発酵によって分解されて炭酸ガスが湧き出ているのです。まさにカカオが生きている証であり、育っている証拠であります。 発酵が終われば直ぐ隣の高床式の簀子の上に広げられ三日間乾燥させます。
甘くフルーツの様だったカカオ豆が乾燥させたあたりから特有の酸味と苦味が兼ね備えられて、いよいよショコラに変化していく過程が、目から鱗が落ちるように心に沁み込んでいきます。本だけの知識で今まで引っかかっていた事がどんどん解けていく快感に身が震えます。 強制的に乾燥させた後は69kgずつ麻袋に詰めて前日に訪れた集積所に集められローストする為にオランダに送られます。ちなみにオランダでローストされたカカオはフランスに渡り粉砕、コンチングされ私の店に送られてきています。 これを、乾燥までされた物を輸入してローストから全て自分でやるというのが、私の夢でありその第一歩が今回の農園開設なのであります。 |